「ウィッグを着けていると、夕方には頭がかゆくてたまらない」「生え際がこすれて赤くなる」「テープを貼った所がかぶれた」。抗がん剤治療による脱毛、円形脱毛症、薄毛のカバー、おしゃれなど、ウィッグを使う理由はさまざまですが、毎日長時間着けるほど頭皮のトラブルは起こりやすくなります。ウィッグを快適に使い続けるための見分け方とケアを整理します。
ウィッグで頭皮トラブルが起きる仕組み
頭皮は汗腺と皮脂腺が多く、もともと汗や皮脂がたくさん出る場所です。ウィッグで覆うと、それが逃げにくくなり、頭皮は湿った状態が続きます。
- 蒸れ…汗の出口がつまってあせもができたり、皮膚がふやけて刺激に弱くなったりします。頭皮にもともといるカビの一種(マラセチア)が増え、フケやかゆみが出ることもあります。
- こすれ…ウィッグの縁が当たる生え際、耳の上、うなじは、動くたびにこすれます。
- 留め具やサイズ…きついウィッグやクリップは、同じ場所を押したり引っぱったりし続けます。
- テープや接着剤…固定用のテープや接着剤の成分にかぶれることがあります。はがすときに皮膚の表面も一緒にはがれ、ヒリヒリすることもあります。
抗がん剤の治療中は、薬の影響で皮膚が乾燥しやすく、刺激に敏感になっていることがあります。そのため、普段よりトラブルが出やすい状態です。
症状と見分け方
| 考えられるもの | 見た目・特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 蒸れ・あせも | 細かい赤いブツブツ、チクチクしたかゆみ | 暑い日、長時間着けた日に強い。外すと軽くなる |
| こすれ | 赤み、皮むけ、ヒリヒリ | 生え際・耳の上・うなじなど縁の当たる所 |
| テープ・接着剤のかぶれ | 強いかゆみ、ブツブツ、ジュクジュク | 貼った形どおりに出る。範囲の外へ広がることもある |
| 脂漏性皮膚炎 | 黄色っぽいフケ、赤み、かゆみ | くり返す。生え際や耳のまわりにも出る |
| 毛包炎(毛穴の炎症) | 毛穴に一致した赤いブツブツ、膿 | 髪が残っている部分や生えはじめの部分に出る |
頭皮を守る着け方と手入れ
- 綿のインナーキャップを使う。汗を吸い、ウィッグの裏地と頭皮が直接こすれるのを防ぎます。インナーは毎日洗ったものに替えます。
- 着けない時間をつくる。家にいる時間は外したり、通気性のよい帽子に替えたりして、頭皮を乾かします。
- 帰宅後は頭皮をやさしく洗って乾かす。刺激の少ないシャンプーを泡立て、指の腹でなでるように洗います。こすると頭皮に細かい傷ができるためです。洗った後は、湿ったまま放置せずに乾かします。
- サイズを合わせる。きついとこすれや圧迫、頭痛の原因になります。髪の量が変わるとサイズも変わるので、合わなくなったら調整を相談しましょう。
- テープは同じ場所に貼り続けない。少しずつ場所をずらし、はがすときは専用の剥離剤を使ってゆっくりはがします。かぶれた所には貼らないでください。
- ウィッグの内側も手入れする。汗や皮脂が付いたままだと、においや菌の原因になります。素材に合った方法で定期的に洗います。
皮膚科での治療
かぶれや湿疹には、炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)を短期間使います。頭皮にはローションタイプが塗りやすく、ウィッグを着けたままでもベタつきにくいものを選びます。脂漏性皮膚炎にはカビを抑える塗り薬やシャンプー、毛包炎には抗菌薬の塗り薬を使います。テープや接着剤が原因か確かめたいときは、皮膚に貼って反応を見る検査(パッチテスト)を検討します。
診察室でよく聞かれる質問
Q. ウィッグを着けていると、髪が生えにくくなりますか?
A. ふつうに使う範囲で、ウィッグが髪の生える力を弱めることは考えにくいです。ただし、クリップやきつい固定で同じ場所を引っぱり続けると、その部分の毛が抜けやすくなることがあります(牽引性脱毛)。留める場所をときどき変えましょう。
Q. 抗がん剤の治療中ですが、頭皮に塗り薬を使ってもいいですか?
A. 多くの場合は使えますが、治療中は皮膚の状態が変わりやすいため、皮膚科を受診するときは治療中であることと使っている薬を伝えてください。主治医の治療チームにも、頭皮の状態を共有しておくと安心です。
Q. 夏はとくにかゆくなります。
A. 通気性のよいネット構造のウィッグや、汗を吸う素材のインナーを選ぶと蒸れが減ります。汗をかいたら、タオルで押さえるように拭き取りましょう。
受診の目安
- 工夫を続けても、かゆみや赤みが2週間以上おさまらない
- テープや接着剤を貼った所がジュクジュクする
- 膿をもったブツブツが増える、痛いしこりができた
- フケや赤みをくり返している
- 治療中で、頭皮の状態が急に悪くなった
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」(確認日: 2026-10-21)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「かぶれ(接触皮膚炎)」(確認日: 2026-10-21)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

