「いつ抜糸ですか」「それまでお風呂は?」「運動はいつから?」——皮膚の手術を受けたあと、患者さんがいちばん気にされるのがこの一連の生活のことです。粉瘤やほくろ、皮膚のできものを切除したあとに共通する考え方をまとめます。
全体の目安としては、術後7〜14日ほどで抜糸となることが多いです。そのうえで、顔は皮膚が薄く血流が良いため早め、背中や関節部など皮膚が厚く動きの多い部位は遅めになる、という部位差があります。
抜糸の時期は「部位」で決まる
縫った直後の傷は、糸によって寄せられているだけで、まだ自分の力ではつながっていません。細胞が新しくつながり、糸を外しても開かない強さになるまで待つ——これが抜糸のタイミングです。
この日数が部位で違うのは、血のめぐりの良さと傷にかかる力(緊張)が違うからです。血のめぐりがよい場所は治りが早く、動きや突っ張りが強い場所は治りが遅く、かつ開きやすくなります。
| 部位 | 抜糸までの目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 顔・まぶた | もっとも短い | 血のめぐりがよく治りが早い。長く置くと糸の跡が残りやすいため |
| 首 | 短め | 同上。ただし動きがあるため顔よりは長め |
| 体幹(胸・腹・背中) | 中くらい〜長め | 皮膚が厚く、傷にかかる張力が強いため |
| 背中・肩 | 長め | 動くたびに引っぱられ、開きやすいため |
| 手足・関節の上 | 長め | 曲げ伸ばしで直接力がかかるため |
| 頭皮 | 中くらい | 血のめぐりはよいが、髪の処置が必要なため |
正確な日数は傷の大きさ・深さ・縫い方・その方の治り方で変わります。「何日目」と決め打ちせず、実際の傷を見て判断するのが原則です。手術を受けた医療機関の指示に従ってください。
なお、溶ける糸(吸収糸)で縫った場合は抜糸がありません。皮膚の内側を寄せるために使うことが多く、表面に出ている糸がなければ抜糸の予定は入りません。
抜糸までの過ごし方
| やること | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| シャワー | 多くは翌日以降から可 | 傷の表面がふさがれば、洗って清潔にするほうが治りがよいため。ただし指示は施設で異なる |
| 湯船につかる | 抜糸まで控えるのが一般的 | 長時間の浸水で傷がふやけ、細菌が入りやすくなるため |
| 石けんで洗う | 可(こすらない) | 泡で包んで流す程度。摩擦は傷を開く力になるため |
| 絆創膏・テープ | 指示されたものを使う | 密閉性の高い絆創膏は蒸れて治りがかえって悪くなることがあるため |
| 運動 | 抜糸まで控える | 汗と、傷が引っぱられる力の両方が問題になるため |
| 飲酒 | 当日は控える | 血のめぐりがよくなり、出血・腫れの原因になるため |
| 重い物を持つ | 控える | 特に体幹・肩の傷は、力むだけで引っぱられるため |
| かさぶたを取る | 取らない | 再生途中の組織を壊すことになり、跡が残りやすくなるため |
抜糸のあと: ここからが「跡」の勝負
意外に思われるかもしれませんが、抜糸は治療の終わりではありません。抜糸の時点で傷がもつ強さは、まだ元の皮膚に遠く及びません。傷あとが落ち着くまでには数か月かかり、その間に引っぱられ続けると、線が太く目立つようになります。
- テープで固定する — 傷と直交する方向の力を減らす目的で、医療用テープを一定期間貼り続ける方法があります。数か月単位で続けることがあります
- 紫外線を避ける — 治りかけの傷は日焼けで色が残りやすくなります
- 赤く盛り上がってきたら早めに相談 — 肥厚性瘢痕やケロイドの可能性があり、早い段階のほうが対応の幅があります(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕とは)
- 数週間は傷が硬く感じる — 治る過程の正常な変化です。徐々にやわらかくなります
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 抜糸は痛い? | ほとんど痛くありません | 糸を切って引き抜くだけで、皮膚を切る操作ではないため。引っぱられる感覚はある |
| 抜糸に麻酔は要る? | 通常は不要 | 数十秒で終わる処置のため |
| 予定日に行けない | 連絡して調整を。自己判断で延ばさない | 遅れるほど糸の跡(縫合線の点々)が残りやすくなるため |
| 自分で抜いていい? | やめてください | 抜く時期の判断と、切る位置・引く方向に意味があるため。感染の危険もある |
| 糸が飛び出して引っかかる | 切らずに、テープで押さえて受診 | 自分で切ると残った糸が皮膚に埋まることがあるため |
| 取ったものは検査する? | 多くの場合、病理検査に出します | 見た目の診断を確定するため。結果は数日〜数週間かかる(関連記事: 皮膚生検とは) |
| 抜糸後すぐ運動していい? | 数日〜数週間は段階的に | 抜糸時点の傷はまだ弱く、急な負荷で開くことがあるため |
すぐに連絡・受診したほうがよいサイン
- 傷が赤く腫れて、押すとずきずき痛む — 時間とともに強くなる痛みは感染のサインです
- 黄色い膿が出る、いやなにおいがする
- 出血が止まらない、ガーゼが繰り返し染みる
- 傷が開いてきた — 早い段階なら対応できることがあります
- 発熱を伴う、赤みが傷の周囲から広がっていく — その日のうちに受診してください。夜間・休日で迷うときは救急安心センター(#7119)が利用できます
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイドと肥厚性瘢痕(確認日: 2026-09-12)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-12)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

