「ニキビだと思って潰そうとしたが、芯が出ない」「歳とともに、おでこに黄色い粒が増えた」——脂腺増殖症は、中年以降によく見られる変化です。ニキビ・稗粒腫・汗管腫と混同されやすく、間違った対処をすると跡が残るため、まず正体を知ることが役に立ちます。
脂腺増殖症とは: 皮脂を作る腺が大きくなったもの
皮膚には毛穴に付随して皮脂腺があり、皮脂を作って皮膚の表面を守っています。加齢とともに、この皮脂腺が増えて大きくなり、皮膚の表面から盛り上がって見えるようになったものが脂腺増殖症です。
見た目には特徴があります。黄色〜肌色でやわらかく、数ミリ。中心が小さくへこんでいて、そこから放射状に細い血管が見える——この「中心のくぼみ」が、ほかのできものと区別する最大の手がかりです。皮脂腺は顔の中心部に多いので、おでこ・こめかみ・頬・鼻に出やすく、複数できることがよくあります。
できやすくなる背景として、加齢のほか、皮脂の多い体質、長期にわたる紫外線の影響、免疫を抑える薬を使っている場合などが知られています。感染するものではなく、悪性化する心配のあるものでもありません。
見分け: 似ている「顔の小さなブツブツ」
| できもの | 色 | 出やすい場所 | 決め手 |
|---|---|---|---|
| 脂腺増殖症 | 黄色〜肌色 | おでこ・こめかみ・頬・鼻 | 中心がへこみ、細い血管が放射状に見える。やわらかい |
| 稗粒腫 | 白い | 目のまわり・頬 | 小さくて硬い。中に白い角質の玉(関連記事: 稗粒腫) |
| 汗管腫 | 肌色〜やや黄色 | 下まぶたに左右対称で多発 | 平たく硬め。中心のへこみがない(関連記事: 汗管腫) |
| ニキビ(閉鎖面皰) | 白〜肌色 | Tゾーン・あご | 赤くなったり膿んだりと変化する。若年に多い |
| 老人性イボ | 茶色〜黒 | 顔・体 | 表面がざらつき、貼りついたように見える(関連記事: 脂漏性角化症) |
| 基底細胞がん | 黒〜灰色、光沢 | 鼻・目のまわりなど顔の中心 | 1つだけ徐々に大きくなる/中心がくずれる/出血をくり返す → 受診 |
診察ではダーモスコープ(拡大して見る器械)を使うと、中心のくぼみと血管の並び方が確認でき、その場で見当がつくことがほとんどです(関連記事: ダーモスコピー検査)。判断が難しい場合は、一部を採って顕微鏡で調べます。
治療: 取らなくてよい。取るなら方法を選ぶ
医学的に必要な治療はありません。そのうえで、見た目が気になって取りたい場合の選択肢は次のとおりです。
- 電気凝固・炭酸ガスレーザー — 盛り上がりを削る、もしくは焼いて平らにする方法です。傷が小さく、日常生活への影響が少ない一方、皮脂腺の根が深いため、再び盛り上がることがあります
- 切除 — 大きいものや、診断を確かめる必要があるときに選ばれます。確実ですが、線状の傷あとが残ります
- 塗り薬・スキンケア — 洗顔や化粧品で消えるものではありません。「毛穴の汚れ」ではないため、こすっても取れず、摩擦で赤みが出るだけです
自分で潰す・針で刺すことは避けてください。中に出てくる芯がなく、押し出そうとした圧で組織が傷み、へこみや色素沈着が残ります。
費用の目安は、保険が適用されるかどうかで大きく変わります。診断のために切除する場合は保険で扱えることがあり、見た目のみを目的とする場合は自由診療になります。自費の場合、1個あたり数千円〜1万円台が目安とされていますが、大きさ・個数・方法によって異なります。主なリスクは、赤みが数週間残ること、色素沈着、へこみ、再発です。
※見た目を目的とした除去は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 増えますか? | 年齢とともに数が増えることがあります | 皮脂腺の加齢変化のため。増えること自体は心配要りません |
| 自然に消える? | 自然には消えません | 組織が増えた状態のため、縮小するきっかけがないためです |
| スキンケアで予防できる? | 確実な予防法はありません | ただし日焼け対策は意味があります。紫外線は皮膚の老化変化全般を後押しするためです |
| 取ったらもう出ない? | 同じ場所に再び出ることがあります | 深い部分の皮脂腺が残るためです。初めに説明を受けておくと納得しやすくなります |
| ニキビの薬は効く? | 効きません | 細菌や角栓の問題ではなく、皮脂腺そのものが大きくなっているためです |
受診の目安
- 急いで受診 — 1つだけが数か月で大きくなっている/中心がくずれてじゅくじゅくする/出血をくり返す/黒く光る/縁が盛り上がって内側がへこんでいる(基底細胞がんなどとの区別が必要です。関連記事: 基底細胞がん)
- 早めに受診 — 硬さが変わった/急に数が増えた/免疫を抑える薬を使っていて、顔のできものが増えてきた
- 相談の目安 — 見た目が気になる/自分で潰してしまって赤みやへこみが残った
- 顔のできもので判断に迷うときは、自己処置の前に一度受診してください。潰したあとでは、もとの形が分からなくなり診断が難しくなります
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ホクロ(確認日: 2026-09-13)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A イボ・ミズイボ(確認日: 2026-09-13)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

