1か月以上治らない傷や、同じ場所で繰り返すかさぶたは皮膚科へ。皮膚がんや血流障害などが隠れていることがあります。1か月は待つ期間ではなく、急な悪化や糖尿病がある方の足の傷は、それより早く受診してください。
「鼻の脇のかさぶたが、はがれてはまたできる」「すねの傷が何か月も治らない」「頭皮に、いつからか分からないじゅくじゅくした場所がある」——このような症状が続いていませんか。
浅い擦り傷や切り傷は、適切に手当てをすると1〜2週間程度で改善することが多いものです。ただし、傷の深さや大きさ、部位、持病などによって治るまでの期間は異なります。
大切なのは、日数だけでなく「少しずつ小さくなっているか」「同じ場所で繰り返していないか」を見ることです。長く治らない場合は、治癒を妨げる原因があるか、そもそも外傷ではない病気が隠れている可能性があります。
傷が治る過程と、治りにくくなる理由
皮膚の傷は、出血を止め、傷ついた組織を処理し、新しい組織をつくり、表面を皮膚で覆うという過程を経て治ります。この流れを妨げる原因には、次のようなものがあります。
- かき壊し・摩擦・圧迫が続いている
かさぶたを繰り返しはがす、衣服や靴でこすれる、同じ場所に体重がかかり続けるといった刺激が、治りを妨げます。 - 傷に合わないケアを続けている
刺激の強い消毒を繰り返したり、傷の状態に合わない処置を続けたりすると、治癒が遅れることがあります。 - 感染している
赤み・腫れ・熱感・痛みの増加、膿などが手がかりになります。 - 血液の循環や持病の影響がある
静脈うっ滞、動脈の血流不足、糖尿病などが関係します。喫煙も傷の治りを妨げる要因です。 - 外傷ではない病気がある
皮膚がんや炎症性の病気などが、「治らない傷」「取れないかさぶた」のように見えることがあります。
傷が治らないことを、手当ての仕方だけの問題と決めつけないことが大切です。
ふつうの傷と、気にかけたい傷
以下は受診を考えるための目安です。見た目だけで良性・悪性を判断するための表ではありません。
| 見る点 | 改善している傷の経過 | 気にかけたい所見 |
|---|---|---|
| 期間 | 日ごとに少しずつ小さくなり、浅い傷なら1〜2週間程度で改善する | 手当てをしても縮小しない。特に1か月以上続いている |
| きっかけ | 切った、擦った、ぶつけたなどの心当たりがある | 心当たりがないのに、いつのまにかできた |
| 経過 | 表面がふさがり、じゅくじゅくする範囲が減る | 治ったように見えても、同じ場所が再びただれる |
| 出血 | 傷ついた直後などに出血し、その後は落ち着く | 軽く触れただけで出血する。何もしなくても出血を繰り返す |
| 縁・硬さ | 腫れや硬さが徐々に落ち着く | 縁が硬く盛り上がる。光沢のある小さなしこりや、傷の下のしこりがある |
| 色 | 血液が乾いて、かさぶたが茶色や黒っぽく見えることがある | かさぶただけでなく、できもの自体の色や形が変化し、大きくなっている |
黒いかさぶたがあるだけで、皮膚がんというわけではありません。乾いた血液の色で黒っぽく見えることもあります。
一方、基底細胞癌や有棘細胞癌などの皮膚がんは、痛みやかゆみが目立たないまま、ただれ・出血・かさぶたを繰り返すことがあります。「痛くないから大丈夫」とは判断できません。
部位ごとに考えやすいこと
顔・鼻の脇・目の周り・耳
基底細胞癌などを確認したい場所です。光沢のある小さなできものがゆっくり大きくなり、中央がへこんでかさぶたになったり、軽い刺激で出血したりすることがあります。
頭皮
髪に隠れて気づきにくく、櫛が引っかかったり、洗髪時に出血したりして初めて分かることがあります。日光角化症や皮膚がんなどでも、ざらつきやかさぶたが続くことがあります。
すね・足首の内側
むくみや静脈瘤を背景に、じゅくじゅくした傷が続くことがあります。静脈の血液が戻りにくくなることで生じる「うっ滞性潰瘍」などが考えられます。
足の裏・足の指
糖尿病による神経障害があると、傷ができても痛みに気づきにくくなることがあります。また、動脈の血流が不足すると、傷に必要な酸素や栄養が届きにくくなります。
神経障害による「気づきにくさ」と、血流障害による「治りにくさ」は別の問題で、両方が重なることもあります。小さな傷でも、痛みの有無だけで判断しないことが重要です。
くちびる
乾燥や刺激による炎症もありますが、一部分のただれやかさぶたが続く、硬いしこりがある、出血を繰り返す場合は、皮膚がんなどの確認が必要です。
過去の傷あと・やけどのあと
古い傷あとに、新しく治らない傷やしこりができた場合は受診してください。頻度は高くありませんが、長年たった瘢痕に有棘細胞癌などが生じることがあります。
なお、皮膚がんは日光の当たる場所だけにできるわけではありません。部位にかかわらず、治らない・繰り返す・大きくなる変化は相談してください。
受診までにできること
かさぶたを無理にはがしたり、傷をこすったり、しこりをつぶしたりしないようにしましょう。浅い傷は水道水などでやさしく洗い、必要に応じてワセリンや傷に貼りつきにくいガーゼなどで保護します。
消毒液や市販のステロイド軟膏を、自己判断で使い続けることは避けてください。すでに医師から処置や薬の指示を受けている場合は、その指示に従い、改善しないことを相談しましょう。
足に傷やむくみがある場合、自己判断で包帯や着圧製品を使って強く締めつけないでください。静脈の病気には圧迫療法が役立つことがありますが、動脈の血流不足があると適さない場合があり、血流の確認が必要です。
同じ距離・明るさで、定規などを添えて写真を撮っておくと、診察時に大きさや経過を伝えやすくなります。ただし、記録のために受診を先延ばしにする必要はありません。
これらは受診までの対処です。原因不明の傷が続く場合は、セルフケアだけで治そうとせず、原因を確認することが大切です。
診察で行われること
皮膚科では、いつからあるか、どのように変化したか、これまでの処置、持病や内服薬などを確認し、傷と周囲の皮膚を診察します。
必要に応じて、ダーモスコピーという器具で皮膚の表面を拡大して観察します。足の傷では血流や感覚の異常、感染が疑われる傷では感染の程度なども確認します。
皮膚がんなどが疑われる場合や、原因がはっきりしない場合には、皮膚の組織を採取して顕微鏡で調べる「皮膚生検」を検討します。通常は局所麻酔で行い、病変の大きさや疑われる病気によって、一部を採るか、全体を切除するかを判断します。結果が出るまでの日数は医療機関や検査内容によって異なります。
治療は原因に応じて異なり、塗り薬だけでなく、圧迫や摩擦を減らす工夫、血流障害への治療、手術などが必要になることもあります。
皮膚がんの場合も、早期に診断できれば、進行してからより小さな範囲の治療で済むことがあります。
受診の目安
早めに皮膚科へ相談したい場合
浅い傷を1〜2週間程度手当てしても改善が乏しい場合や、特に1か月以上治らない場合は相談してください。同じ場所でただれを繰り返す、自然に出血する、しこりが大きくなるといった変化があれば、期間にかかわらず受診しましょう。
「1か月」は、がんかどうかを分ける基準でも、それまで待ってよいという意味でもありません。
糖尿病や足の血流障害がある方は、新しい足の傷に気づいた時点で、かかりつけ医や皮膚科に相談してください。痛みがないことや、傷が小さいことは、放置してよい理由にはなりません。
当日中に受診したい場合
傷の周囲の赤み・腫れ・熱感が広がる、痛みが増す、膿が出る、発熱がある場合は、感染の可能性があります。
また、かさぶたの色ではなく、傷の周囲や足の指などの皮膚自体が黒く変色してきた場合は、感染だけでなく血流不足による組織の障害も考えられます。早急な診察が必要です。
救急受診が必要な場合
見た目に比べて非常に強い痛みがある、数時間で急速に悪化する、意識がぼんやりするなどの場合は、重い感染症の可能性があります。翌日まで待たず、救急受診してください。
足が急に冷たくなり、強い痛みやしびれ、皮膚の色の変化が出た場合も、急な血流障害の可能性があるため、速やかな受診が必要です。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、開業後は皮膚腫瘍の診断と手術に対応する予定です。
よくある質問(Q&A)
Q. 抗菌薬の軟膏を塗っても治りません。もっと強い薬が必要ですか?
必ずしもそうではありません。細菌感染が原因でなければ、抗菌薬を使い続けても改善しないことがあります。
さらに、抗菌薬などの塗り薬や、傷を覆う絆創膏・テープそのものが、かぶれの原因になることもあります。薬を塗り始めてからかゆみが増えた、テープの形に赤くなっている、といった変化があれば伝えてください。
Q. 皮膚生検をすると、がんが広がったり転移したりしませんか?
適切な方法で行う皮膚生検について、「刺激するとがんが広がる」と心配して、必要な検査を避ける必要はありません。
メラノーマでも、部分生検が転移を助長するという従来の懸念は、研究によってほぼ否定されています。ただし、病変の種類や大きさ、深さを正しく評価するために、採取する場所や方法を選ぶ必要があります。
Q. 治らない傷に、市販のハイドロコロイド絆創膏を貼り続けてもよいですか?
原因が分からない傷や、長期間治らない傷に、自己判断で貼り続けることは避けてください。
市販のハイドロコロイド絆創膏には、感染した傷や受傷原因が分からない傷などには使わないよう定められた製品があります。糖尿病や血流障害がある場合も、使用前に相談が必要です。
Q. 生検でがんではないと言われましたが、まだ傷が治りません。どうすればよいですか?
「がんではない」という結果は重要な情報ですが、それだけで傷が治らない原因が解決したとは限りません。血流障害や炎症、繰り返す刺激などへの治療が引き続き必要な場合があります。
治療を続けても改善しない、大きくなる、出血が増えるといった場合は再診し、検査結果とその後の経過をあわせて見直します。必要に応じて追加検査や再生検を検討することもあります。
関連ページ
参考文献・参考情報
- 日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」Q2:症状、Q8:予防方法と早期発見のコツ.(公益社団法人日本皮膚科学会)
- 日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「メラノーマ(ほくろのがん)」Q6:メラノーマは部分生検してはいけないのですか?(公益社団法人日本皮膚科学会)
- American Academy of Dermatology. Basal cell carcinoma: From symptoms to treatments. (米国皮膚科学会)
- American Academy of Dermatology. How to treat minor cuts; Minimize a scar: Proper wound care tips from dermatologists. (米国皮膚科学会)
- American Academy of Dermatology. Cutaneous squamous cell carcinoma clinical guideline. (米国皮膚科学会)
- MedlinePlus. How wounds heal. (メドラインプラス)
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Diabetes & Foot Problems. (糖尿病・消化器・腎臓疾患研究所)
- NHS. Venous leg ulcer: Diagnosis; Treatment. (nhs.uk)
- NHS. Peripheral arterial disease (PAD); Necrotising fasciitis. (nhs.uk)
- バンドエイド公式サイト.キズパワーパッド Q&A「使用に関して」「注意が必要な方」.製品の使用上の注意の確認に参照.(バンドエイド)
本記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。個別の症状については、医療機関で診察を受けてください。

