「手のひらがカサカサして皮がむける」「保湿しても、ステロイドを塗ってもよくならない」「そういえば足も水虫かもしれない」——このパターンは、手白癬(てはくせん)である可能性があります。手の皮むけの原因としては手湿疹のほうが圧倒的に多いのですが、手白癬を手湿疹として治療すると、治らないどころか悪化します。ここが臨床上いちばん大事な分かれ目です。
手白癬とは: 足の水虫と同じ菌が、手にうつったもの
水虫の正体は白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌)です。皮膚のいちばん外側にある角質層のケラチンを栄養にして住みつきます。手白癬は、この菌が手の皮膚に感染したものです。
特徴的なのは「片手だけ」に出やすいという点です。自分の足の水虫を手でかいたり、爪の水虫を触ったりすることで、利き手側にうつるためです。医学的には「両足+片手」という組み合わせが知られており、これに当てはまるときは手白癬の可能性がぐっと高くなります。
手湿疹との見分け
| 手白癬(手の水虫) | 手湿疹(主婦湿疹) | |
|---|---|---|
| 左右 | 片手だけのことが多い | 両手に出ることが多い |
| 足の状態 | 足にも水虫があることがほとんど | 足は関係ないことが多い |
| かゆみ | あまりかゆくないことも多い | かゆみが強いことが多い |
| 見た目 | 粉をふいたような細かい皮むけ、境目がはっきり | 赤み・ひび割れ・じくじく。境目があいまい |
| 場所 | 手のひら全体、手のしわに沿って白い粉 | 指先・指の腹から始まることが多い |
| 爪 | 爪も白く濁っていることがある | 爪は正常なことが多い |
| ステロイドの反応 | 一時的に楽になるが、やめると広がる | 塗ると改善する |
とくに注目していただきたいのが最後の行です。ステロイドは炎症を抑える薬であって、菌を殺す薬ではありません。手白癬に塗ると、赤みやかゆみは一時的に引くのに、その間に菌はむしろ増えます。塗るのをやめると前より広い範囲に出てくる——この経過をたどったなら、白癬を強く疑う根拠になります。
診断: 顕微鏡で見れば、その場で分かる
手白癬かどうかは、見た目だけでは確実に判断できません。診察では、皮むけしている部分の角質を少し採り、薬品で溶かして顕微鏡で観察します(直接鏡検)。白癬菌がいれば、糸状に伸びた菌の形が見えます。数分で結果が出る検査です。
ここで大事な注意があります。市販の水虫薬やステロイドを塗ってから受診すると、菌が見つかりにくくなり、診断が確定できなくなります。可能なら数日〜1週間ほど薬を休んでから受診してください。「治らないから」と塗り続けたまま来られる方が多いのですが、原因が確定しないと適切な薬を選べません。
治療: 外用が基本。範囲と爪で判断が変わる
- 手のひらの皮膚だけなら、抗真菌薬の外用 — 1日1回、症状が消えてからもしばらく続けます。見た目がよくなっても菌は残っているため、自己判断で早くやめると再発します
- 塗る範囲は広めに — 症状が出ている場所だけでなく、手のひら全体に塗ります。目に見えない範囲にも菌が広がっているためです
- 爪に及んでいるなら内服を検討 — 爪の中には外用薬が届きにくく、爪が菌の供給源として残り続けます(関連記事: 爪水虫(爪白癬)とは)
- 足の水虫を同時に治す — 手だけ治しても、足が残っていればまたうつります。これが再発のいちばん多い理由です
飲み薬は肝臓への影響や、ほかの薬との飲み合わせを確認したうえで使います。市販薬で自己流に対応するより、検査で確定させてから適切な薬を選ぶほうが、結果的に早く終わります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 家族にうつる? | うつることはある。ただし過度に恐れなくてよい | 菌が付着しても、すぐ洗い流せば定着しにくいため。タオル・バスマットの共用は避ける |
| 手袋をして家事をすべき? | 長時間の蒸れは避ける | 湿った環境は菌が好む。手湿疹の場合も、蒸れとこすれが悪化因子になるため |
| かゆくないのに水虫? | かゆくない水虫は珍しくありません | かゆみは菌の有無ではなく、炎症の強さで決まるため |
| 保湿剤は塗っていい? | 塗ってよい | ひび割れの予防になる。抗真菌薬とは別のタイミングで |
| 治るまでどのくらい? | 皮膚なら数週間〜数か月が目安 | 角質が入れ替わるのを待つ必要があるため。爪はさらに長くかかる |
| 片手だけなら必ず水虫? | いいえ。かぶれや掌蹠膿疱症などもある | 片側性は手がかりの一つであり、決め手は検査だから |
受診の目安
- 手の皮むけが片手だけに出ている
- 保湿やステロイドを続けてもよくならない、やめると広がる
- 足にも水虫がある、爪が白く濁っている
- 膿をもったぶつぶつが手のひらに出る — 別の病気の可能性があります(関連記事: 掌蹠膿疱症とは)
- 赤く腫れて熱を持つ、ずきずき痛む — 細菌感染を合併している可能性があるため、早めに受診してください
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(水虫・たむしなど)(確認日: 2026-09-12)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-12)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

